「咳」といっても、実はいろいろなタイプがあるのをご存知ですか?タイプによって原因はさまざま。そのため、対処法や治し方も違います。咳をしっかり治すためには、まずあなたの「咳」のタイプを知ることが大切です。
咳の原因はカラダの内側?外側??
まず大きく分かれるのが“外因による咳”なのか“内因による咳”なのかという点です。外因の咳とは咳の原因がカラダの外的な要因にある咳のことで、その多くは風邪やインフルエンザに代表されるようなウイルスや菌、乾燥・湿気・暑さ・寒さなどの大きな気候変化、ホコリやダニ、花粉、タバコのような微粒子などによって起こると言われています。発症は急ですが、原因が比較的分かりやすく、症状の経過も短く治りやすいのが特徴です。
一方、内因による咳とは咳の原因がカラダの内面の要因にある咳のことで、カラダの弱りや老化、体調の崩れ、アレルギーなどによって起こることが多く、発症は緩慢ですが、症状の経過が長く、慢性化しやすい傾向にあり、喘息のように一度良くなってもまた反復するなど治りにくいのが特徴です。
外因タイプは咳の症状に注目!外因タイプの咳の見分け方
外因タイプの咳のときは、まず“咳の症状”に着目しましょう。咳と言っても、乾燥した咳や湿った咳、痰のからむ咳などさまざまです。痰も水様性のサラサラなものから粘性の強い切れにくい痰まで実に多様です。この症状の差こそが、あなたの咳の原因を知るための重要なヒントになるのです。咳の症状をしっかりと観察することであなたの咳のタイプが見えてきます。タイプを見誤って対処してしまうと逆に咳を悪化させる原因になってしまうことも。きちんと見極めて対処することが重要です。
寒い風邪タイプ(表寒)
発熱があっても寒気があるのが特徴で、咳以外にも鼻水、鼻づまり、頭痛、関節痛など風邪の症状が出やすくなります。
カラダを冷やすと咳が悪化しやすくなります。カラダをしっかり温めて、ゆっくり休みましょう。
<代表的な症状>
咳 鼻づまり 鼻水 のどがかゆい 薄く白い痰
頭痛 発熱 悪寒または悪風
熱い風邪タイプ
目立った悪寒はなく発熱しやすい傾向があります。痰も粘性があり、黄色を帯びていて、のどの痛みなど炎症症状が出やすいのも特徴です。布団をかぶるなど体を温めると咳が悪化する可能性があります。温め過ぎには注意して、安静にしましょう。
<代表的な症状>
咳 黄色または黄白色で粘性のある痰 口の乾燥 のどの痛み、頭痛 鼻づまり 発熱 軽度の寒気(悪風)
燥邪タイプ
大気の乾燥により呼吸器系が乾燥して出る咳は、痰は少量で粘性が強く切れにくいのが特徴です。咳以外にも、鼻腔の乾燥やのどの乾燥感も出やすくなります。大気の乾燥が原因であることが多いので加湿により乾燥を防ぐことが効果的です。また室内を乾燥させやすい暖房や冷房などは気を付けましょう。水や飴などでのどを潤すのも効果的です。
<代表的な症状>
咳 粘性が強く切れにくい少量の痰
または乾燥した咳で痰がない ひどいときには胸の痛みがある
鼻の穴の乾燥 のどの乾燥 のどのかゆみや痛み
暑湿タイプ
暑さと湿気により呼吸器系が侵されて出る咳は、粘性がある痰がたくさん出やすく、のどが渇きますが実際に飲むと欲しくないという特徴があります。梅雨時期や夏の湿気の多い時期などに出やすい傾向があります。外気の湿気によりカラダに余分な湿気が溜まりやすくなっている状態なので、必要以上に水分を取らず、水の巡りを良くするよう心掛けましょう。冷房や除湿などで暑さ、湿度を調整するのも効果的です。
<代表的な症状>
咳 粘性がある大量の痰 胸苦しい 発熱 熱感 汗が多い 頭が張る
のどが渇くが水分はあまり欲しくない 焦燥感 顔が赤い 尿が濃く少量
むせるような咳の原因と対処法
むせるような咳は、のどや気管支の炎症や刺激によって起こる症状です。風邪や気管支炎などの感染症が原因である場合もありますが、熱のでない症状を説明します 。胃や食道の問題が関係している場合もあります。一般的には、風邪や気管支炎、肺炎、結核は熱が出ます、咳だけで熱が出ない場合は気管支喘息、COPD、胃食道逆流症、誤嚥などが考えられます。
胃から逆流した胃酸が気管に入ると、気管を刺激してむせるような咳を引き起こします。これは胃食道逆流症と呼ばれ、食事の量や内容、食べ方などによって起こりやすくなります。食事の際には、辛いものや酸っぱいもの、油っこいものなどの刺激物を避けることや、食べ過ぎないこと、寝る前に食べないことなどが大切です。また、辛いものなど食べ物の味が強すぎると、胃酸の分泌を増やして逆流を促すこともあります。
また、食べ物が気管に入ってしまうこともむせるような咳の原因になります。これは誤嚥と呼ばれ、加齢や歯の問題、神経筋疾患などが影響して起こります。誤嚥を防ぐためには、食べ物を細かく切ったり、水分を多めにしたりすることや、ゆっくり噛んで飲み込むこと、姿勢を正して食べることなどが効果的です。食べ物が気管に入らないようにするためには、口の中でしっかり噛んでから飲み込むことが重要です。
上記の様にむせるような咳が長期間続く場合は慢性咳嗽が疑われます。この場合は、内服薬や吸入薬などで症状をコントロールする必要があります。また、タバコや花粉などの刺激物を避けることも重要です。
咳だけで熱が出ない場合に考えられる病気
咳だけで熱が出ない場合は、感染症以外の原因で気道や肺に炎症や刺激が起こっている可能性があります。例えば、以下のような病気が考えられます。
気管支喘息:気管支の粘膜が過敏に反応して狭くなり、息苦しさやゼイゼイするような咳が出ます。咳は夜間や早朝に悪化することが多く、痰は少ないか無いことが多いです。気管支喘息はアレルギーやストレスなどの要因で発作的に起こります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD):気管支の粘膜が長期的に炎症を起こし、分泌物が増えて咳が出ます。咳は日常的に起こり、痰は多くて黄色や緑色をしています。慢性気管支炎はタバコや大気汚染などの刺激物によって引き起こされます。
肺炎:肺の組織に細菌やウイルスなどの感染が起こり、咳や呼吸困難などの症状が出ます。肺炎は通常は高熱や寒気なども伴いますが、高齢者や免疫力の低下した人では発熱しない場合もあります。咳は深くて刺すような感じで、痰は血液や膿を含んでいます。
結核:肺に結核菌という細菌の感染が起こり、咳や体重減少などの症状が出ます。結核は感染力が強く、他人にもうつります。咳は長期間にわたって起こり、痰は血液を含んでいます。
咳だけで熱が出ない場合でも、自己判断せずに医師に相談することが大切です。咳の種類や持続期間、痰の量や色などを伝えると診断に役立ちます。
寝る時だけ咳がひどくなる理由と対策
寝る時だけ咳がひどくなる場合は、以下のような原因が考えられます。
鼻水の流れ:鼻の粘膜が炎症を起こして鼻水が出ている時は、横になると鼻水が喉に流れて咳を引き起こします。これは風邪やアレルギーなどのときに起こります。鼻水の流れを防ぐためには、寝る前に鼻をかむことや、枕を高くすること、塩水で鼻を洗うことなどが効果的です。
気管支の刺激:気管支の粘膜が乾燥や冷気などで刺激されて咳が出ている時は、横になると気管支の圧力が変わって咳がひどくなります。これは気管支炎や肺炎、気管支喘息などのときに起こります。気管支の刺激を和らげるためには、寝る前に温かい飲み物や飴を舐めることや、部屋の温度や湿度を適切に保つこと、タバコや香水などの刺激物を避けることなどが大切です。
自律神経の働き:咳は自律神経(交感神経と副交感神経)の働きが影響しています。昼間は交感神経が活発に働いて咳が抑えられますが、夜間は副交感神経が活発になり気管支が狭くなることで咳が出やすくなります。
空咳は風邪のサイン?それとも別の原因?
空咳は、咳をする際に痰や粘液を伴わない咳です。
風邪の治りかけているときの症状として現れることがありますが、風邪以外の原因でも空咳が起こることがあります。特に、コンコンと乾いた咳が数週間以上続く場合は、咳喘息やアトピー咳嗽の可能性があります。咳喘息は気管支喘息とは異なりますが、気管支が過敏に反応して咳が出る病気です。アトピー咳嗽は自身あるいは家族がアレルギー疾患を持っている人に多い病気で、気管支が過敏に反応して咳が出るのは同じですが、治療薬は異なります。
空咳の対策としては、まず原因を特定することが重要です。風邪の場合、充分な休息を取り、水分を摂り、喉にやさしい温かい飲み物を摂ることが役立ちます。咳喘息やアトピー咳嗽の場合、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが必要です。
空咳が長く続く場合や症状が悪化する場合は、風邪とは別の疾患の兆候かもしれません。そのため、適切な診断と治療を受けるために医師に相談することが大切です。呼吸器系の健康を保つために、早めの対策と治療が必要です。
咳が治りかけている時の特徴
咳は体の防御反応の一つで、異物や細菌などを排出する役割がありますが、咳が治りかけている時は、以下のような特徴が見られます。
咳の回数や強さが減る:咳は感染症の初期段階では頻繁に出ることが多く、コンコンと乾いた咳やゴホゴホと深い咳など様々なタイプがあります。咳が治りかけると、咳の回数や強さが減ってきます。これは気道や肺の炎症が落ち着いてきたことを示しています。
鼻水や痰の量や色が変わる:鼻水や痰は感染症の進行度合いを表すものです。鼻水や痰が多くて黄色や緑色をしている場合は、重症化していることを示しています。鼻水や痰が少なくて透明になってきたら、軽度化していることを示しています。
のどの違和感や痛みが和らぐ:のどは気道の入り口であり、のどに違和感や痛みがある場合は、風邪の兆候であることが多いです。のどの違和感や痛みが和らぐと、風邪が治りかけていることを示しています。
咳が治りかけている時期は、これらの特徴に注意して自分の体調を把握することができます。しかし、咳が完全に治ったわけではないので、無理をせずに十分な休息や水分補給をすることや、必要に応じて医師に相談することも大切です。
咳の種類は、咳以外の症状にも着目して見極めよう!
咳の症状に着目する外因タイプに対して、内因タイプは咳の症状だけでなく、咳以外の症状にも着目するのが原因を見分けるポイントです。
内因タイプの咳の原因はさまざまです。咳に直結する呼吸器系だけではなく、胃腸の弱りや全身の水分循環の悪化、慢性疲労や老化、ストレスなど一見咳には関係なさそうに思えることも咳の原因になる場合があります。
内因タイプでは咳だけでなく、同時に同じ原因からくるカラダのトラブルが起こりやすいのが特徴です。そこに注目することで、あなたの咳の本質が見えてきます。咳以外に何かカラダの不調はありませんか?振り返ってよく考えてみましょう。
内因の咳をしっかり改善するためには咳を抑える対症療法だけではなく、咳が出ている根本の原因(内因の原因)を整える“根治療法”を一緒に行うことが大切です。といっても、外因の咳に比べて内因の咳はなかなか自分自身では根本原因は分かりにくいものです。